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J.S.K.S.増刊号

太古を偲ぶ(4年 伊藤文一)

投稿日時:2022/10/25(火) 23:54


 

 不安定な気候ながらも肌を刺すような寒さが目立つ時期になってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。4年の伊藤文一です。写真は季節も寒さも全く関係ないベルツノガエル。こいつの棲んでる南米はもうそろそろ夏なので、見て癒されて暖かい草原を感じてください。口に入れば何でも食べますが、ペットとして人気があるカエルらしいです。


 あまりの寒さに外出が憚られる毎日。勉強とラグビーに終始する日々が続いているためブログに書くことが特にありません。ので、カンブリア紀の化石の話でもしようと思います。


 ラグビーを始めて数ヶ月経った高校一年生の夏、同期との海水浴を断ってこっそり赴いた上野の化石展でアノマロカリスと出会いました。




艶やかで流線的なフォルムと強かな関節肢から成る完璧なプロポーションが見る者の両目を掴んで離しません。生物的な強靭さとは裏腹につぶらな眼と愛嬌のある雰囲気を有しており、優雅さをたたえた神秘的な佇まいからは水中を悠々と跳梁する姿がありありと想像できるでしょう。柔と剛という相反する様態を芸術的なバランスで兼ね備えるこの生命体を前に、私の心は一瞬にしてパラダイムシフトを迎えました。

 アノマロカリスは「バージェス動物群」の一員で、約5億年前に生態系の頂点に君臨していたとされる生き物です。胴には複数の体節を持ち、こんな可愛らしい顔をしていますが関節肢の根本にある口でバリバリと生物を捕食する節足動物です。学名である”Anomalocaris”は「奇妙なエビ」の意。


 

 約54000万年前から始まるカンブリア紀の地球は現代からは想像できないような環境でした。後のシルル紀になるまで陸上に動物どころか植物もおらず、大陸の形も今とは大きく異なります。しかし同時に、「カンブリア爆発」なる生物量の急激な増加が見られた時期でもありました。少し前のエディアカラ紀に栄えたエディアカラ生物群とは違い、この頃に生まれた生物たちの遺伝子は現代まで脈々と受け継がれるものとされています(=現存する殆どの動物門がこの時期に出現してます)


ちょっと見えにくいですがエディアカラ生物群の一例。ふしぎな形の生き物が多くてこっちも面白いです。


 また、生物量の増加に比例してバリエーション豊かな進化の様態が見られます。特に外骨格や眼球を生物が獲得したというのが特徴的でしょう。後者については一つの巨大な複眼を持つカンブロパキコーペや五つの目を持つオパビニアなど、見た目が印象的な実例が多いです。捕食者が眼球を持てば逃げる方にも眼球が必要となり、結果としてカンブリア爆発が一気に進んだという考え方もあります(光スイッチ説)

 こうした大量の生き物たちが極めて良好な状態で化石化して、カナダのロッキー山脈のバージェス頁岩という地層に集中的に残されています。転じて、このカンブリア紀の生き物たちを「バージェス動物群」としたワケです。つまり特定の系統に属する動物の括りではなく、たまたまそこにいた多種多様な動物群を一括りにしているため、生物種のるつぼとも言えるでしょう。三葉虫やハルキゲニアなどは有名ですが、他にも奇怪で愉快なフォルムの生き物が勢揃いなのがバージェス動物群の面白いところです。興味の湧いた方はぜひ国立科学博物館へ。常設展だけでも貴重な化石がお腹いっぱい見られます。

 

 化石や古書と向き合うとき、過去の遺物とある意味「対話」しているとつくづく思います。先述したように、生き物には連綿と受け継がれてきたルーツが確かに存在します。かつて人が作り出したものにも、生み出された理由や環境が絶対に存在します。脈々と累積した事物の歴史に思いを馳せるのも楽しいのですが、たまにはそうしたしがらみから離れて「対話」をおこなうのも悪くないなぁと思うのです。何百年、何億年の時を超えて自分の前にある遺産と点と点で繋がる感覚が、一対一で相対する興奮が、えもいえぬロマンを想起させるのです。


 気づけば大会期間の半分が過ぎ、残すところあと3試合です。ここまでコツコツと積み上げてきた日々は必ず我々の力になりますが、時には過去の一点にも目を向けてみてください。試合の結果がどうであれ、試合後の感触がどうであれ、「この瞬間」の自分がどうであったか。自分の「このプレー」は上手くいって良かった/失敗したから直したい。今ではないその瞬間の自分との「対話」を経て見えてくるものがあるでしょう。たまには肩の力を抜いて、今とは少し違った過去の自分に向き合ってみると意外な発見があるかもしれません。

 何はともあれ残りの試合、最高のプレーに数多く出会えるよう、いずれ振り返った自分を少しでも成長させてくれる瞬間を作れるよう、一瞬一瞬を大切にして全力で臨んでいきましょう。



次回は….

1年生ながらもチームを支え続けてくれたJSKSの精神的支柱、梅村一太くんにお願いしましようかと思います!

よろしく!!!

 

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